京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学

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ドナー細胞由来造血器腫瘍の発症に関わる分子機構の解明

医の倫理委員会承認番号(承認日) G1021(2016年4月11日承認)
研究責任者 髙折 晃史
研究期間 2016年4月11日より2020年3月31日まで
研究目的 発症頻度が低いことから、ドナー由来造血器腫瘍(DCL)に関する分子遺伝学的な病態解析は一例ごとの解析などごく少数の症例を対象とした研究にとどまっており、その発症病態についての全体像は明らかになっていない。
そこで本研究では、DCLを発症した患者を対象とし、DCLの細胞に生じている遺伝子異常を網羅的に検出し、DCLの発症に関与する分子遺伝学的異常を探索することを計画した。さらに、DCLにみられた遺伝子異常を手掛かりとして、患者の移植直前および移植以降の骨髄または末梢血中や、ドナー末梢血または移植片などに混入しているDCLクローンの有無および量的な変化を経時的に検出することで、DCLの発症に至る動的な変化を検出し、発症の全容を解明することを目指す。
研究概要 造血器腫瘍の発症に関与しうる遺伝子の異常の種類は多様であり、遺伝子の構造異常(染色体転座、欠失、反復、点突然変異)、遺伝子の量的異常(欠失、増幅)、遺伝子発現制御の異常など多岐にわたる。その点を踏まえ、本研究では、DCLの検体よりゲノムDNAおよびRNAを抽出し、SNPアレイや次世代シークエンサーといったゲノム解析技術を用いて、DCL細胞に生じている遺伝子異常を網羅的に探索し、発症に関わる遺伝子変異の探索を行う。
さらに、患者の移植直前および移植後の骨髄や、ドナー由来の移植細胞や末梢血がSTR解析や研究などのために保存されていた場合には、DCL細胞で検出された遺伝子異常の有無をdeep sequencingやcapture sequencingなどで定量的に解析し、DCLの発症過程を経時的に探索する。
解析には、診療または研究の目的ですでに採取されている検体の残余分である既存試料を用いる。骨髄バンクを介した非血縁ドナーからの移植においては、移植成績向上を目的とした検体保存事業にてドナーから同意を得て採取・保存された検体を用いる。
倫理面での配慮
個人情報保護の方針
この研究は、人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(厚生労働省)を守って行います。
あなたにお答えいただいた内容は、連結可能匿名化という方法を用いて匿名化します。連結可能匿名化とは、お答えいただいた内容に識別番号をつけて匿名化しますが、個人が特定できる情報(氏名やカルテ番号)と識別番号の対応表を鍵のかかる場所に保管する方法です。また、研究協力を辞退されても診療上の不利益を被ることはありません。
結果の公表について この研究によって成果が得られた場合は、国内外の学術集会・学術雑誌などで公表します。その際にも、ご提供者の個人情報が明らかになることはありません。
研究組織・共同研究機関 研究の主たる責任者及び連絡先は、国立成育医療研究センター 小児がんセンター 移植・細胞治療科 医長 加藤元博(電話番号03-3416-1811)であり、当院の責任者は京都大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科 近藤忠一(電話番号075-751-3152)です。この研究は、主に国立がん研究センター中央病院 造血幹細胞移植科が研究を推進して行い、共同研究機関として京都大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科が参加します。企業や特定の営利団体からの資金提供などは受けておりません。
研究組織と本研究の問い合わせ先 研究責任医師:
京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学 講師
近藤 忠一
TEL: 075-751-3152

臨床研究相談窓口:
京都大学医学部附属病院 総務課 研究推進掛
E-mail: trans@kuhp.kyoto-u.ac.jp
TEL:075-751-4899
研究参加辞退のお申し出先 研究責任医師:
京都大学医学部附属病院 血液・腫瘍内科 講師
近藤忠一
TEL: 075-751-3152
研究者から一言 DCLは一般の造血器腫瘍の発症頻度よりも明らかに頻度が高く、細胞源として臍帯血が多いこと、臍帯血を除くとドナー年齢が高いほど発症率が上がること、骨髄系の造血器腫瘍が多いなどの特徴を有することから、何らかの特異的な病態があることが予測される。
ただし、これまでのDCLの分子病態に関する解析研究は、いずれも単数の症例を対象とした症例報告の範疇にとどまっており、症例を集積することでより意義の高い知見が得られると期待される。
また実際に、DCLの分子遺伝学的異常について検討した研究では、DCLで検出された獲得性変異が移植された幹細胞の中からもわずかに検出されている。近年のゲノム解析の進歩により、検体中に存在するわずかな量の腫瘍細胞を検出することも可能となり、移植後の経時的な検討を行うことでDCLの発症過程をより包括的に理解することができると考えられる。
関連する研究番号と課題名 G697: 造血器疾患における遺伝子異常・エピジェネティクス異常の網羅的解析研究