京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学

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HBV既往感染歴を有する同種造血細胞移植レシピエントに対する,HBワクチンによるHBV再活性化予防法のランダム化検証的試験

研究課題名 HBV既往感染歴を有する同種造血細胞移植レシピエントに対する,HBワクチンによるHBV再活性化予防法のランダム化検証的試験
研究責任者 髙折晃史,近藤忠一
医の倫理委員会承認番号
(承認日)
C1416(2018年11月20日承認)
研究期間 2018年11月20日より2023年3月31日まで
研究計画の改定と
医の倫理委員会承認時期
改定なし
研究目的 同種造血細胞移植を受けた,HBs 抗原陰性かつ HBc 抗体陽性の既往感染症例(HBV DNA 1.3 Log IU/mL 以上の症例は除く)に対して,移植後 140±14 日時点で,HB ワ クチン接種群と非接種群にランダムに割付し,HB ワクチン接種(移植後 196,224,364 ±14 日),移植後 392±14 日の採血で HBs 抗体<10 mIU/mL の場合は追加ワクチン接 種(移植後 420,448,588±14 日)による移植後 HBV 再活性化の予防効果を多施設共 同前方視的研究にて検証する。
研究概要 同種造血細胞移植後,既往感染による HBs 抗体は移植後徐々に低下しやがて消失する。
これはレシピエント由来の形質細胞が移植後消失するのに従い,抗体の供給が途絶えるた めと考えられる 7。既往感染者における同種造血細胞移植後の HBV 再活性化関連肝障害は, 免疫が途切れ再増殖可能となった HBV に対して,生着したドナー細胞が免疫反応を起こす 事により生じると考えられる。HBV 再活性化は移植後比較的後期の合併症であり, ウイルス再活性化の前に HB ワクチンにより生着したドナー細胞を免疫する事により,HBV 再燃が予防されることが期待される。HBIG を用い HBs 抗体を保つことでも予防可能と考えられるが,造血幹細胞移植症例は 肝移植症例よりもはるかに多く,年間 3500 件を超えている 。製剤供給面からも HBIG で HBs 抗体を保つことは難しい。一方,生涯に渡り免疫抑制剤投与が必要となる固形臓器移
植とは異なり,造血細胞移植においては免疫抑制剤中止が可能であり,やがて生着したド ナー細胞による免疫が回復する。このため同種造血細胞移植後の HB ワクチンによる HBV 再活性化の予防が期待される。しかしながら,移植後は HB ワクチンの成功率は健常人より も低いと考えられ,現在に至るまで,同種造血細胞移植後の HB ワクチンによる,HBV 再 活性化予防の臨床効果は前方視的研究によって明らかにされていない。本臨床試験では HBs 抗原陰性,HBc 抗体陽性,HBV DNA 1.3 Log IU/mL 未満
の HBV 既往感染例を対象とする(HBV DNA 検出感度以上で,1.3 Log IU/mL 未 満の HBV 潜伏感染例の登録を許容する)。
なお,HBs 抗原陰性,HBc 抗体陰性,HBs 抗体陽性,HBV DNA 検出感度未満例 (HBs 抗体単独陽性例)については,HBV 既往感染や HB ワクチン接種既往,あ
るいは輸血・ガンマグロブリンによる移行抗体の鑑別が必要となり本臨床試験の 対象とはしない。本臨床試験の目的は,HBV 既往感染歴を有する同種造血細胞移植レシピエントに
対して,移植後に HB ワクチンを接種することでの HBV 再活性化予防効果を検証す ることである。プライマリーエンドポイントを HBV 再活性化割合とし,Kaplan-Meier 法にて HBV 再活性化割合を推定する。ワクチン群,非ワクチン群における HBV 再活 性化割合を Log-rank 法にて比較し,HB ワクチンによる HBV 再活性化予防の有用性 を検証する。
倫理面での配慮
個人情報保護の方針
試験の実施については京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院医の倫理委員会で倫理的及び科学的な面から公正な目で審議され,承認を受け,病院長の許可を受けています。さらに,この研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(厚生労働省)を守って行います。登録患者の氏名は参加施設からデータセンターへ知らされることはない。登録患者の同定や
照会は,登録時に発行される登録番号,患者イニシャル,生年月日,カルテ番号を用いて行わ
れる。患者名など,第三者が当該施設の職員やデータベースへの不正アクセスを介さずに直接
患者を識別できる情報が,データセンターのデータベースに登録されることはない
結果の公表について この研究によって成果が得られた場合は,国内外の学術集会・学術雑誌などで公表します。その際にも,ご提供者の個人情報が明らかになることはありません。
研究組織・共同研究機関 この研究は,主たる研究機関は,名古屋市立大学 血液・腫瘍内科であり,当科は共同研究施設として参加する。当科の研究の責任者は,京都大学医学部附属病院血液・腫瘍内科 近藤忠一です。企業や特定の営利団体からの資金提供や薬剤等の無償提供などは受けておりません
研究組織と
本研究の問い合わせ先
研究代表者
楠本 茂 名古屋市立大学 血液・腫瘍内科 当院研究責任医師:
(所属・職名): 京都大学附属病院 血液腫瘍内科講師
(氏名): 近藤 忠一
電話番号: 075-751-3152

臨床研究相談窓口
京都大学医学部附属病院 総務課 研究推進掛
電話番号: 075-751-4899
メールアドレス: trans@kuhp.kyoto-u.ac.jp
研究参加辞退のお申し出先 研究責任医師:
(所属・職名): 京都大学附属病院 血液腫瘍内科講師
(氏名): 近藤 忠一
電話番号: 075-751-3152
研究者から一言 HBV 再活性化の問題は本邦だけでなく,アジア,欧米も含めた全世界で取り組む べき課題である。欧米においては HBV 感染率が低い一方,日本以外の東アジア地 域では HBs 抗原陽性の HBV キャリア率が高い。本邦においては母子感染予防策に より HB キャリア率は激減している一方,HBV 既往感染者は疾患世代となる高齢 世代を中心に高い。また,前述したように,造血細胞移植技術の向上により移植 年齢の上昇も著しい。HBV 感染症の疫学背景を考慮すると,本臨床試験は,本邦 においてまさに今しかできないものであり,世界へ発信すべきエビデンスとなる。
関連する研究番号と課題名 なし