京都大学大学院医学研究科 血液・腫瘍内科学

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HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における従来型GVHD予防法と抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の無作為割付比較試験

研究課題名 HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における従来型GVHD予防法と抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の無作為割付比較試験
研究責任者 髙折晃史,近藤忠一
医の倫理委員会承認番号
(承認日)
C1319(2017年10月19日承認)
研究期間 2017年10月19日より2022年6月30日まで
研究計画の改定と
医の倫理委員会承認時期
改定なし
研究目的 HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における,タクロリムス・メトトレキサートによる従来型GVHD予防法とタクロリムス・メトトレキサートにサイモグロブリンを併用したGVHD予防法の治療成功率を無作為割付比較試験によって検討する。
研究概要 日本のレジストリーデータを用いたHLA 1座不適合血縁者間移植症例の解析が行われたが,移植後100日におけるグレードIII-IVの急性GVHDの発症頻度は,ATG使用群,非使用群でそれぞれ11%,21%と前者で有意に低いことが示された(P<0.001)。13 また慢性GVHDの発症頻度もATG使用群で有意に低下していた。さらにATG使用群はATG非使用群と比較して治療関連死亡率が低く生存率が高い傾向にあった(3年生存率46% vs. 34%,P=0.084)。また,ATG使用群,非使用群の3年生存率は,標準リスク群で56%,51%,ハイリスク群で43%,21%と,有意ではないもののいずれもATG使用群で高かった。ATGの種類,用量に関する情報は一部の症例のみしか得られなかったが,サイモグロブリン投与量は中央値2.5 mg/kgであった。以上より,血縁者間移植において,HLA 1座不適合が存在するとGVHD発症頻度は高くなるものの,ATG使用により急性および慢性GVHD発症頻度は低下し,その結果,疾患再発リスクによらず全生存率が改善する可能性が示されている。一方,HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植に対するタクロリムスとメトトレキサートによる標準的なGVHD予防法においては,HLA適合非血縁者間骨髄移植と比較してGVHD発症頻度および非再発死亡率が高いことが問題となっている。サイモグロブリンを用いたGVHD予防法を用いることにより,GVHDの発症頻度およびGVHDに伴う非再発死亡率の低下が期待できる。一方,サイモグロブリン投与により,アナフィラキシー様症状や血小板数低下,筋肉痛や関節痛などの症状が出現することがある。またEBウイルス再活性化によるリンパ腫発症やその他の感染症のリスク増加,GVT効果減弱による再発リスク増加の可能性がある。
そのため,本研究ではHLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における,タクロリムス・メトトレキサートによる従来型GVHD予防法とタクロリムス・メトトレキサートにサイモグロブリンを併用したGVHD予防法の治療成功率を無作為割付比較試験によって検討する。従来は生存率や無病生存率がプライマリーエンドポイントに設定されていたが,GVHD予防法の比較試験の場合,急性GVHDおよび慢性GVHD発症抑制に関する評価も必要である。またGVHDは患者の生活の質にも大きな影響も及ぼす。そのため,近年,複合型エンドポイントとして,死亡,再発,グレードIII以上の急性GVHDの発症,全身治療を必要とする慢性GVHDの発症,のいずれにも該当しない無GVHD無病生存(GVHD-free,relapse-free survival; GRFS)を治療成功として評価することが重要視されている。17本研究においても,この治療成功率をプライマリーエンドポイントとする。
倫理面での配慮
個人情報保護の方針
試験の実施については京都大学大学院医学研究科・医学部及び医学部附属病院医の倫理委員会で倫理的及び科学的な面から公正な目で審議され,承認を受け,病院長の許可を受けています。さらに,この研究は,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針(厚生労働省)を守って行います。個人情報および診療情報などのプライバシーに関する情報は個人の人格尊重の理念の下,厳重に保護され慎重に取り扱われるべきものと認識し,万全な管理対策を講じ,プライバシー保護に努める。
プロトコール登録予定の患者に対して匿名化番号(患者識別番号)を割り当て,患者登録時含め,匿名化番号を用いる。患者・匿名化番号対応表およびデータは,各施設で研究責任者により厳重に保護され慎重に取り扱われる。
結果の公表について この研究によって成果が得られた場合は,国内外の学術集会・学術雑誌などで公表します。その際にも,ご提供者の個人情報が明らかになることはありません。
研究組織・共同研究機関 この研究は,主たる研究機関は,自治医科大学附属病院・附属さいたま医療センター血液科であり,当科は共同研究施設として参加する。当科の研究の責任者は,京都大学医学部附属病院血液・腫瘍内科髙折晃史,近藤忠一です。企業や特定の営利団体からの資金提供や薬剤等の無償提供などは受けておりません
研究組織と
本研究の問い合わせ先
研究代表者
神田善伸自治医科大学附属病院・附属さいたま医療センター血液科 当院研究責任医師:
(所属・職名): 京都大学附属病院血液腫瘍内科講師
(氏名): 近藤忠一
電話番号: 075-751-3152

臨床研究相談窓口
京都大学医学部附属病院総務課研究推進掛
電話番号: 075-751-4899
メールアドレス: trans@kuhp.kyoto-u.ac.jp
研究参加辞退のお申し出先 研究責任医師:
(所属・職名): 京都大学附属病院血液腫瘍内科講師
(氏名): 近藤忠一
電話番号: 075-751-3152
研究者から一言 本研究により,HLA 1座不適合非血縁者間骨髄移植における抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリン併用GVHD予防法の有用性が明らかになることが期待できる。
関連する研究番号と課題名 C0777,GVHD予防法に抗ヒト胸腺細胞免疫グロブリンを用いたgraft-versus-host方向HLA一抗原不適合血縁者からの造血幹細胞移植療法の多施設共同第II相試験